このページでは、マレーシアに現地法人の会社名(=商号)を決める際の会社法上の注意事項について解説致します。
日本で法人を設立する場合と比べますと、マレーシアでの会社名に関するルールは厳しいものとなっております。
希望する会社名がマレーシア会社登録委員会(Companies Commission of Malaysia)に認められなかった場合、再度別の名前での申請が必要となり、再度申請が必要となります(費用も別途かかります)。
会社名決定の際は、会社設立を依頼されているカンパニーセクレタリーと十分に打ち合わせされることをお勧め致します(このページをご覧の方はぜひ私どもへご相談ください)。
また、会社登録委員会のウェブサイト( http://www.ssm.com.my/en )で社名サーチができますので、ご自身でも事前にある程度調査が可能です。
目次
会社名の必須要件について
会社名には必ず、公開会社の場合は「Berhad」またはその略である「Bhd.」(公開会社の場合)、そして非公開会社の場合は「Sundirian Berhad」またはその略である「Sdn. Bhd.」を含めなければなりません(SDN. BHD.を使用することが一般的です)。
この要件が定められている主な目的は、当会社と取引をする第三者に対して、「あなたは、有限責任である株式会社と取引をしようとしているのですよ」ということを知らせることにあります。
なお、日本の場合、会社の性質を表す「株式会社」の文字は会社名の前でも後でもどちらでもよいですが、マレーシア現地法人の場合、必ず末尾に上記「BHD.」または「SDN. BHD.」を添える必要があります(会社法24条に例外規定あり)。
使用できない会社名について
マレーシア会社法22条(1)により、会社は会社登録委員会が望ましくない(undesirable)と考える会社名については使用できないということになっています。
どのような場合に「望ましくない」とされるのかは会社法上明示されていませんが、すでに同じ名前の会社が存在する場合はたとえ会社住所が全く異なる場合でも不可とされますし(cf 日本は住所が違えばOK)、担当登記官の判断により会社が行う事業とかけ離れた会社名の場合は変更を事業内容にあった会社名への変更を促されることがあります。
また、the Registration of Business Rules 1957 により、「Royal」「King」等の王室に関する文言や「Federal」「State」等の国や地方自治体との関係をほのめかすような文言の使用は大臣の許可を得ない限り認められないこととなっています。
会社名使用許可の手続きについて
日本で会社設立手続きをする場合、会社設立の登記申請時に会社名の使用可否が登記官により判断されますが、マレーシアの場合は異なります。
マレーシアの場合、会社設立登記を申請する前に、「会社名使用許可の申請」をまず先に行います(会社法22条)。
そして、会社登録委員会がその会社名使用を許可した場合、そこから3ヶ月間は他社はその社名(または類似した社名)を使用することができないということとなっています。ですので、その間に会社設立登記の申請を必要があります。
会社名の使用許可申請に対する会社登録委員会からの回答は、通常、申請から数日で届きます。
会社名の変更について
会社設立後、会社名を変更することは認められています(会社法23条)。
その場合の要件としては、株主総会の特別決議(special resolution)と会社登録委員会からの承認です。
当然ですが、会社名を変えたからといって、その会社の法人格自体は従前と変わらず存続しますので、権利や義務関係に影響を及ぼすことはありません。
なお、会社名を変更した場合、その後1年間は、会社が発行するすべての書面(business letter, statement of account, invoice, official notice, publication等)上で新会社名の下に記載される必要があります(マレーシア会社法121条)。
例:
ABC global Sdn. Bhd.
(Formerly Known As ABC cosulting Sdn. Bhd.)
マレーシアでビジネスをするにあたり、休眠会社の買取りを検討されている方もいらっしゃるかもしれませんが、従前の社名を記載しなければならないという点にお気をつけいただければと思います(そもそも私は休眠会社を利用する方法はお勧めしていませんが)。
会社が発行する書類への社名記載義務について
会社名は、会社が発行する全ての書類等(下記のような書類)に記載される必要があります。
- common seal
- every business letter, statement of account, invoice, official notice, publication etc.
この義務に違反した会社および関係役員は、会社法違反ということになりますのでご注意ください。
追記(2022年2月11日):ラブアン法人ガイド
マレーシアでの法人設立に関しましては、
主には国外向けのビジネスや投資を行う場合が対象ですが、
マレーシア国内の国際金融/ビジネスセンター、ラブアン島にて法人を設立、就労ビザを申請する
という選択肢もございます。
このラブアン法人につきまして、
- ラブアン法人の設立
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- 就労ビザ・扶養家族ビザ申請
- 税改正
- 税申告の流れ
- ラブアン法人をご利用いただく場合の注意事項
- 設立、口座開設、ビザ申請、法人維持の費用
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などをまとめたPDFを
USD100(約11,000円)にて販売しておりますので、
ひとまず体系的に情報をご入手いただきたい場合は、下記の弊社オンラインストアより、
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合計93ページ、約49,000字のボリュームとなっております。
2021年末の最新の改正内容も盛り込んでいるほか、
ラブアン法人のことだけでなく、一般のマレーシア法人との比較なども解説しておりますので、
マレーシア法人とラブアン法人のどちらを設立するかを悩まれている方にとっても役立つ内容かと思います。
単なる一般的な情報の羅列ではなく、
弊社の経験をベースとして、実務上の取り扱いなども多く盛り込んでいる点が一般的な市販の書籍やネット上の情報などと異なる点です。
お支払いにつきましては、
Paypalのほか、「別のお支払方法」から、クレジットカードでご購入いただくことが可能です。
当ガイドの購入費用につきましては、
購入後1年以内に実際に法人設立費用に進むこととなった場合には、
設立サポート費用から控除させていただきます。
目次:
なお、マレーシア法人設立につきましても、
現在、設立ガイドを作成中ですので、完成次第、上記のオンラインストアにアップさせていただきます。
今のところは、まだ有料で販売するほどのボリュームや完成度ではありませんので、
マレーシア法人の設立をご検討されている旨をメールいただきましたら、
無料で交付させていただきます。
その他のサービス、分野等に関しましても、随時、執筆していきますので、
完成次第、オンラインストアにて販売させていただきます。