マレーシアで飲食店を開業する手続き。


目次

個人事業での創業の可否

マレーシアでは、外国人が個人事業登録することは認められておりませんので、
起業する場合には、必ず、法人を設立する必要があります。

そして、外国人がマレーシア国内で就業する場合には、
その設立した法人に自分が雇われるかたちで、雇用パス(Employment Pass:「就労ビザ」と言われることも多いです)
を移民局へ申請することとなります。

 

就労ビザ申請のタイミングと申請の流れ

なお、法人設立前に就労ビザの申請はできませんので、
まずは、ビザを持たない状態で法人を設立し、
そして、その後に就労ビザを申請する、という流れとなります。

また、就労ビザを申請するには、
事前に、店舗の契約や事業に必要なライセンスの取得しておくことなども求められます。

ビザ申請の手続きは、わりと頻繁に変更がありますし、ケース・バイ・ケースで異なりますので
一概に言うことは難しいですが、
イメージとしては、以下のとおりです(順番が前後したり、同時進行で進める場合もあります)。

1)法人設立
2)銀行口座開設
3)資本金を入金
4)増資手続き
5)店舗契約やマレーシア人スタッフの採用
6)御社の店舗所在地を管轄する市役所から事業所ライセンスや看板ライセンス等の取得
7)飲食業を管轄する省庁等からライセンスの取得
8)移民局へ会社の登録
9)個人のビザ申請

 

 

事業開始にあたり必要なライセンスについて。

事業を行うために取得が必要となるライセンス(許認可)は、
事業を行う州、事業内容、マレーシア人の出資の有無などの様々な要素によって異なります。

以下では、外資系企業が、飲食業を行う場合に、一般的に取得が必要になるライセンスに関して解説致します。

 

WRT許可(Wholesale Retail Trading Approval)

外資系企業がレストラン等の飲食店舗事業を行う場合に関しては、
現状、国内取引・協同組合・消費者省(Ministry of Domestic Trade, Co-operatives & Consumerism : MDTCC)が所轄の管轄庁となっており、
MDTCCは、
飲食店舗事業に関して、
2010年5月に発行された

外資が流通取引サービス業に参入する場合のガイドライン
(Guidelines on Foreign Participation In The Distributive Trade Services Malaysia)
https://www.kpdnhep.gov.my/images/dokumen/perdagangan/perdagangan-pengedaran/WRT_Guideline.pdf

が適用されるとしています。

 

同ガイドラインでは、
外国企業や外国人が上記事業に参入する場合、
事前に、MDTCCからWRT許可(Wholesale, Retail Trade Approval)を得る必要があると定めています。

ガイドラインですので法律ではありませんが、
駐在員の就労ビザの申請の際、移民局は外資系企業に対して、このWRT許可書を添付するように求めていますので、
就労ビザの取得が必要な外資系企業としては、遵守せざるをえないガイドラインとなっています。

なお、認可取得のための条件として、
払込資本金(Paid-up Capital)として、「最低100万リンギ以上」(=約2800万円以上)とされていますので、
中小企業にとってはなかなか高いハードルとなっています。

 

ところで、「外資が参入する場合」とはどういう場合があてはまるかと言いますと、
MDTCCのガイドラインを文字通り読みますと、1%でも外資が含まれる場合はこのガイドラインが適用されると読めます。

ただ、実務的には、
ビザ申請先である移民局が、外国企業/外国人が資本の50%超えの企業に対してのみ
WRT許可書を求めているため、
実務的には、「マレーシア資本に51%を所有させた場合はWRTは免除される」と説明されることが多く、
実際、マレーシア人が50%を超える資本を保有している会社の場合はWRTを取得していないケースが多いです。

 

事業所ライセンス、及び看板ライセンス

店舗所在地を管轄する自治体から、事業所ライセンス(レストランライセンス)を取得する必要があります。

当ライセンスでは、当店舗がレストラン事業を行うのに適したものであるかどうかという点が審査されます
(適したものであることを証する資料として、店舗レイアウトや消防設備関係の書類、食品取扱研修を受けたことを証するコピー等を提出が求められます)。

ビジネスライセンスを取得するには、
法律に基づき食品取扱研修の受講やすべての食品取扱者はチフス予防接種が必要となります。
また、事業所所在地を管轄する自治体の保険局(State Department of Health)等に必要書類を提出し、食品事業所登録をする必要があります。

さらに、レストランに看板を設置するには、看板ライセンス(サインボードライセンス)を取得する必要があります。
一般的に、事業所ライセンスと看板ライセンスは併せて申請します。両ライセンスともに有効期間は1年ですので、毎年の更新が必要です。

 

アルコールライセンス(必要な場合のみ)

アルコールを販売する予定がある場合、管轄自治体よりアルコールライセンス(Liquor License)を取得する必要があります。
この申請は、上記事業所ライセンスの申請が完了した後に行う必要があります。

 

音楽ライセンス(必要な場合のみ)

店舗にて音楽を提供する予定がある場合、
PPM(Public Performance Copyright Protection)やMACP(Music Author’s Copyright Protection)からライセンスを取得する必要があります。

詳細は以下のウェブサイトをご覧下さい。

PPM
http://www.ppm.org.my

MACP
http://www.macp.com.my

 

サービス税ライセンス(該当する場合のみ)

売上が一定額を超える企業は、
サービス税課税事業者となりますので、サービス税の登録を行い、サービス税の徴収と納付が必要となります。

 

ハラルライセンス(必要な場合のみ)

イスラム教の戒律に沿った食品等に与えられるハラル認証が必要な場合、JAKIM(Jabatan Kebajikan Agama Islam)へ申請をします。

JAKIM
http://www.halal.gov.my

 

 

必要な資本金額について

 

WRT Approvalの取得が必要な会社(=資本の過半数を外資が保有する会社)

  • WRT申請のために 100万リンギット以上の資本金

 

WRT Approvalの取得が不要な会社(=資本の過半数をマレーシア人が保有する会社)

この場合、WRT許可の取得は不要とされていますので、
資本金100万リンギットは不要です。

但し、その場合でも、
就労ビザ申請のために、移民局が定めている下記資本金額が必要となります。

  • マレーシア資本100%の場合:25万リンギット以上
  • マレーシア資本との合弁会社の場合:35万リンギット以上

 

実際に払込みが必要か

上記の「資本金額」は、授権資本金(authorized capital)のことではなく、実際に払込みがされた払込資本金(paid-up capital)のことを指しますので、
実際に株主から法人口座へ振り込み、増資手続きをする必要があります。

 

 

手続きの流れと所要期間

上述しましたとおり、
一般的には、以下のような流れとなります。

但し、ケースバイケースで、手続きが前後することもありますし、
同時進行で進めるものもあります。

1)法人設立:準備開始から登記完了まで、一般的には、数週間~1ヶ月前後
マレーシアへの渡航は必須ではないですが、
マレーシアに住所を要する取締役が最低1名必要ですので、
マレーシアに住所を手配する等のため、マレーシアへお越しいただくことが必要となります。

2)銀行口座開設:銀行員とのご面談から2週間から1ヶ月半
マレーシアにお越しいただき、銀行員とご面談が必要となります。
どの銀行を利用するかにより、所要期間は大きく異なります。

3)資本金を入金:日本での送金手続きからマレーシアへの着金まで1週間前後

4)増資手続き:増資申請書類へのご署名から登記完了まで数週間

5)店舗契約やマレーシア人スタッフの採用:所要期間はケースによって様々です。

6)市役所から事業所ライセンス等の取得:準備開始からライセンス取得まで1~数ヶ月前後

7)MDTCCからWRT許可の取得:準備開始からライセンス取得まで数ヶ月から半年。あるいはそれ以上。
ライセンスの審査は非常に時間を要します。
また、省庁側の審査スケジュールや担当官によって、所要期間が大きく異なりますので
所要期間を予測するのは困難な状況となっております。

8)移民局へ会社の登録::準備開始からライセンス取得まで数ヶ月から半年。あるいはそれ以上。
移民局側の審査スケジュールや担当官によって、所要期間が大きく異なりますので
所要期間を予測するのは困難な状況となっております。

9)個人のビザ申請:申請から数週間から1ヶ月程度。

 

難易度

会社設立登記はそれほど難しくないですが、
その後の口座開設、ライセンス申請、ビザ申請は非常に手間がかかりますし、審査も厳しいです。

日本で放送されたマレーシア特集の影響もあり、
マレーシアでの起業やビザの取得が容易であるかのようなイメージを持たれている方も多いですが、
テレビ番組では良い場面ばかりが強調されており、
その裏側にある大変な部分はあえてカットされています。

実際のところは、皆様がイメージされている何倍も大変ですし、
時間もかかります。

基本的に、マレーシア政府は、
ライセンスやビザに関しては、「マレーシア人やマレーシア企業では提供できないような商品、サービスを提供する企業」にしかライセンスは発行しませんし、
「マレーシア人では代替できないような役職、職務内容を担当する外国人」「マレーシア人では代替できないようなスキルを持った外国人」にしか就労ビザは発行してくれません。

したがいまして、
「マレーシア人がすでに行っているような貿易会社」などにはライセンスがおりにくいですし、
単なる「事務作業スタッフ」「レストランのウェイター」というポジションに対して就労ビザを取得するのは困難です。

手続き費用

事案により異なります。
個別にお見積りさせていただきますので、どうぞお気軽にお問い合わせ下さいませ。

 

 

実績

クアラルンプール・デサスリハタマスの焼鳥屋『鶏鬨 クアラルンプール支店』など
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マレーシア進出支援セミナー@東京中小企業投資育成株式会社 主催:一般社団法人海外展開支援センター様
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追記(2022年2月11日):ラブアン法人ガイド

マレーシアでの法人設立に関しましては、
主には国外向けのビジネスや投資を行う場合が対象ですが、
マレーシア国内の国際金融/ビジネスセンター、ラブアン島にて法人を設立、就労ビザを申請する
という選択肢もございます。

このラブアン法人につきまして、

  • ラブアン法人の設立
  • 銀行口座開設
  • 就労ビザ・扶養家族ビザ申請
  • 税改正
  • 税申告の流れ
  • ラブアン法人をご利用いただく場合の注意事項
  • 設立、口座開設、ビザ申請、法人維持の費用
  • 弊社へご依頼いただく場合のサポート費用

などをまとめたPDFを販売させていただいております。

ひとまず体系的に情報をご入手いただきたい場合は、下記の弊社オンラインストアより、
「ラブアン法人設立、口座、ビザ申請ガイド」をお買い求めくださいませ。

合計93ページ、約49,000字のボリュームとなっております。

2021年末の最新の改正内容も盛り込んでいるほか、
ラブアン法人のことだけでなく、一般のマレーシア法人との比較なども解説しておりますので、
マレーシア法人とラブアン法人のどちらを設立するかを悩まれている方にとっても役立つ内容かと思います。

単なる一般的な情報の羅列ではなく、
弊社の経験をベースとして、実務上の取り扱いなども多く盛り込んでいる点が一般的な市販の書籍やネット上の情報などと異なる点です。

 

お支払いにつきましては、
Paypalのほか、「別のお支払方法」から、クレジットカードでご購入いただくことが可能です。

 

当ガイドの購入費用につきましては、
購入後1年以内に実際に法人設立費用に進むこととなった場合には、
設立サポート費用から控除させていただきます。

Kumakiblog Online Store

目次:

なお、マレーシア法人設立につきましても、
現在、設立ガイドを作成中ですので、完成次第、上記のオンラインストアにアップさせていただきます。

今のところは、まだ有料で販売するほどのボリュームや完成度ではありませんので、
マレーシア法人の設立をご検討されている旨をメールいただきましたら、
無料で交付させていただきます。

その他のサービス、分野等に関しましても、随時、執筆していきますので、
完成次第、オンラインストアにて販売させていただきます。

 

 

お問い合わせ

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