マレーシア法人設立の条件について(2023年版)


目次

設立要件早見表

項目要件
取締役1名以上
居住取締役の必要性マレーシア居住の取締役が最低1名必要
株主1名以上
居住株主の必要性不要
最低資本金会社設立時:1リンギ以上

事業許可・就労ビザ申請時:
御社の資本構成や業種によって、35万リンギ~100万リンギ、もしくはそれ以上の資本金が求められることがあります。
会社秘書役1名以上の資格を持った専門家を会社秘書役として任命する必要あり
オフィス設置設立時:
不要。登記住所は必要ですが、設立時に選任する会社秘書役住所が登記住所になります。

就労ビザや事業ライセンス申請時:
会社秘書役住所のほかに、御社独自のビジネス住所が必要であるためオフィス契約必要。

 

質問1:外国人や外国法人による100%出資で会社を設立することはできますか?

過去にはマレーシア人資本を入れることが求められておりましたが、
現状、外国資本100%保有の会社による事業活動が多くの業種で認められています(IT企業、飲食業、製造業、コンサルティング業など)。

これにより、マレーシア人株主や名義借り株主の権利行使やリスク管理などにリソースが取られることなく安定した事業運営が可能です。

 

他方で、教育関係事業など一部の業種では、事業ライセンスの要件として今でもマレーシア人資本を入れることが求められています。
この「マレーシア人資本」に関しては、マレーシア人であればマレー系でも、中華系でも、インド系でも認められる業種もあれば、
「マレー系マレーシア人」を入れることを求められる業種もあります。

 

マレーシア進出を検討される際は、まずは御社の業種に関してどのような事業ライセンスの取得が必要であるか、
そして、その要件はどのようなものであるかを調査されるところから始める必要があります。
(弊社の提携先会計事務所や法律事務所の方で調査業務を承っていますので、ご希望がありましたらお問合せくださいませ)

 

 

質問2:株主は何名必要ですか?

最低1名の株主(Shareholder)でマレーシア法人を設立することができます。

ただし、上記のとおり、業種によってはマレーシア人株主を含めることが求められる業種がありますので、
その場合は、事業ライセンスを申請するまでには、マレーシア人株主を追加する必要があります。

 

 

質問3:株主はマレーシア国内に居住している必要はありますか?

必要ありません。

なお、株主には居住要件は求められていないものの、
会社の役員(Director)については、最低1名のマレーシア居住者を選任することが求められています。ただし、マレーシア人である必要はありません(マレーシア在住の日本人でOKです)。

 

 

質問4:資本金として、最低いくらを出資する必要がありますか?

マレーシア会社法が規定する払込資本金の最低額は、1リンギットです。

しかしながら
マレーシア法人の取締役(director)や従業員の就労ビザ(Employment Pass)を取得するためには
就労ビザを申請するまでに、移民局が定める最低資本金要件以上の金額に増資する必要があります。

また、業種によっては、就労ビザを申請する前に事業に関連するライセンス/許認可を取得することが求められますので
その事業ライセンスを申請するまでに、その事業ライセンスが定める最低資本金要件以上の金額に増資する必要があります。

移民局が定める最低資本金要件:

「外国人/外国企業が資本の過半数を有する会社」が就労ビザ申請をする場合:50万リンギ以上
「マレーシア人が資本の過半数を有する会社」が就労ビザ申請をする場合:35万リンギ以上

事業ライセンス/許認可が求められる業種と最低要件の例:

「外国人/外国企業が資本の過半数を有する会社」が「飲食業、小売業、貿易業、サービス業(コンサル業含む)」を行う場合:100万リンギ以上
※「マレーシア人が資本の過半数を有する会社」の場合はこの要件は適用されません。

 

なお、昨今お問合せを多く頂戴しているIT関連事業に関しては、基本的には、上記の「移民局が定める最低資本金」で就労ビザ申請を行うことができます。

ただし、上記の金額はあくまでも求められる「最低額」ですので、
上記金額を出資したからといって必ずしもEmployment Passが取得できるわけではなく、移民局の判断次第ではケースバイケースでさらなる資本金が求められることもありますし、
資本金が大きいほど就労ビザが認可される可能性も高くなります。

 

 

質問5:マレーシアで会社を設立するには、最低何名の取締役が必要ですか?

2017年1月31日に施行された2016年会社法(Companies Act 2016)以前は、2名以上の取締役が必須とされていましたが、
現在の2016年会社法においては、非公開会社に関しては1名の取締役(Director)でマレーシア法人を設立することが可能です。

 

 

質問6:取締役として、マレーシア人を選任する必要がありますか?

マレーシア人の取締役を選任する必要はなく、日本人取締役のみで会社を設立することができます。

 

 

質問7:マレーシアに居住している取締役を選任する必要があると聞いたのですが?

はい、そのとおりです。

最低1名のマレーシア居住取締役を選任する必要があります。
ただし、マレーシア人である必要はなく、マレーシア居住であれば日本人でもOKです。

なお、会社法上、「居住取締役」とは「マレーシアに主たる居住地がある取締役」とされていますが、
会社設立申請を行った際に登記所がそれをチェックしているのではなく、
会社設立を依頼する先である会社秘書役(Company Secretary:登記専門家)がそのチェックを任されているという実務状況にあります。

そして、依頼する会社秘書役によって「居住取締役」の解釈にかなり大きなバラツキがあり、
厳格な会社秘書役の場合は、マレーシア居住のマレーシア人、もしくは、就労ビザ等の長期滞在ビザをもってマレーシアに居住している外国人のみを居住取締役として扱い、
一方、緩い会社秘書役の場合は、たとえ就労ビザ等をもっていない外国人の場合でも、マレーシアの住所(=賃貸契約書など)を提出することさえできれば居住取締役として認める、
という扱いをしているところもあります。

ご希望があれば、弊社から上記の緩い会社秘書役をご紹介させていただくことも可能です。

 

 

質問8:私はマレーシア国外に居住しているのですが、マレーシア法人の取締役に就任することはできますか?

はい、可能です。

ただし、上記のとおり、マレーシア法人を設立・維持するためには最低1名の「居住取締役」が必要である点はご留意ください。

 

 

質問9:居住取締役として就任してもらえる現地パートナーがいません。名義貸しサービスがあると聞いたのですが、利用してもいいのでしょうか?

まず、上記のとおり、
会社設立の依頼先である会社秘書役によっては、マレーシアの住所(=賃貸契約書など)さえ提出すれば日本人を居住取締役として扱ってくれるところもありますので、
会社法的には少しグレーゾーンであることをご理解されたうえで、そのような会社秘書役を利用することを検討されても良いかと思います。

名義貸しサービスを利用される場合、
その名義貸しサービスが会社秘書役の所属する会社や会計事務所等の専門家サイドから提供されるものであれば、
私の経験上、リスクは少ないと思います。

一方で、
現地の知人や友人、知り合いのマレーシア人等に名義貸しを依頼される場合は注意が必要です。

これらの方々は専門家ではありませんので、名義貸しの意味を理解していない場合があったり、
御社マレーシア法人のビジネスが将来軌道にのった場合などに自分の取締役としての権利や地位を急に主張してくる、というようなことも考えられます。

名義貸取締役も、対外的には御社マレーシア法人の取締役ですので、
当該名義貸取締役が御社の許可なく行った取引についても法人が責任を負うことがあります。

また、当該名義貸取締役が不法な行為により会社名で第三者を害した場合、
他の取締役個人に対して監督義務違反を追求してくる債権者がいないとも限りません。
そのような場合、貴殿が取締役に就任していたとすれば、たとえ有限責任株式会社で事業を行っていたとしても、貴殿個人として責任を負うことがあります。

マレーシア法人の維持においては、取締役会決議書の作成を求められる場面が非常に多くあるのですが、
その名義を借りた取締役が頻繁に出張される方である場合やレスポンスが悪い人の場合、その署名をもらうことができるまでは各種手続きを進めることができない
というような場面もよくあります。

 

質問10:会社秘書役(Company Secretary)とは何ですか? 法人設立の際に必ず雇わないといけないのですか?

日本の株式会社と違い、
マレーシア法人には、取締役(Director)や株主(Shareholder)の他に、会社秘書役(Company Secretary)という役職があります。

マレーシア法人は、必ず最低1名の会社秘書役を選任する必要があります。

誰でもが会社秘書役に就任できるわけではなく、会社秘書役の資格を持った者のほか、会計士、弁護士などのような一定の資格者のみ就任が認められています。

会社秘書役の役割は、

  • 会社に対して会社法や定款に基づくアドバイス
  • 会社法や定款のルールを遵守しているかどうかのチェック・アドバイス
  • 取締役会の準備や出席
  • 株主総会の準備
  • マレーシア会社登録委員会への年次報告書の提出
  • 登記申請
  • 取締役会決議書、株主総会決議書の作成

などです。

なお、弊社に会社設立手続きをご依頼いただいた場合は、
弊社の提携先の会社秘書役をご紹介しておりますので、御社ご自身で探していただく必要はございません。
(法人設立後の会計・監査・税務などを行う会計事務所も弊社からご紹介可能です)

 

質問11:法人設立時に、マレーシアにオフィスを借りることは必要ですか?

法人設立時に、オフィスをご準備いただくことは必須ではありません。

マレーシアの会社法、登記手続きにおきましては、
会社の住所にあたる登記事項として、以下の2つの概念があります。

  • 登記住所(Registered Address)
  • ビジネス住所(Business Address)

 

登記住所については、
法人設立時に選任した会社秘書役のオフィス住所が御社の登記住所として登録されます。
登記住所には、政府からの連絡物が届き、届きましたら会社秘書役から御社へ連絡が入ります。

ビジネス住所は、法人設立時は空欄のままでもOKとされています。
法人設立後、御社が独自のオフィスを契約されれば、このビジネス住所の欄に登記することとなります。
(登記住所の方は会社秘書役の住所のままです)