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合弁契約書/株主間契約書で定めておくべきこと
合弁形態(マレーシア人の友人/知人から株主として名前を借りる場合も含む)でマレーシアへ進出または起業することとなった場合、
合弁相手方との間で、下記のような事項について事前に充分に協議し、書面を作成しておくことがとても重要です(とりわけ過半数の株式をもたない株主にとっては)。
この協議の内容をまとめた契約書面のことを、合弁契約書(Joint Venture Agreement)、または株主間契約(Shareholders Agreement)と言います。
協議すべき内容・契約書に記載すべき条項は事案により様々ですが、例としては以下のような事項があります。
・合弁会社の法人形態、商号、設立目標日、設立費用の支出割合、本店所在地
・合弁会社の資本金、出資割合、割り当てられる株式数
・増資が必要となった場合の出資割合、追加出資の代わりに合弁会社への貸付が認められるかどうか
・それぞれの会社から何名ずつ取締役を選任するか
・秘書役(company secretary)、監査人(auditor)として誰を選任するか
・取締役会の招集方法(「何日前に通知必要」等)、開催場所、定足数、決議要件、運営方法(言語、資料等)
・株主総会の招集方法、開催場所、定足数、決議要件(普通決議、特別決議)、運営方法
・合弁事業の両当事者(つまり株主)の事前の書面同意を要する事項
(ex. 定款の変更、合併又は売却もしくは重要な資産の譲渡、何リンギット以上の支出、事業内容の変更、何リンギット以上の借入れ、新株や社債の発行、株主に対する配当等)
・合弁事業の両当事者による経営会議の開催頻度、開催場所、決議事項、運営方法
・少数株主の権利(ex 「株式の10%を保有する株主は会計記録、税務申告書類、顧客との取引記録、人事関係の記録、◯◯を保有する権利がある」など)
・合弁事業の両当事者が提供する協力や支援の内容(情報提供、技術援助、設備の供給、原材料の供給、製品の販売、融資・保証、損失分担、人員、知的財産権など)とそれに対する報酬について
・合弁会社によって生み出された知的財産の所有権の帰属について
・合弁契約が効力を有する期間や解除について
・合弁事業の両当事者間の協議がまとまらず合弁会社の経営がデッドロック状態に陥った場合の処置(片方当事者による株式の買い取りや清算について)
・清算する場合の損失分担(ex 「精算時、合弁会社の資産によって債務が完済できない場合、両当事者は出資割合に従って速やかに不足額を支払わなければならない」など)
・株式の譲渡制限
・表明保証(「当合弁契約を締結することやその履行が、各当事者の会社の定款その他の規定に違反するものではないこと」など。
たとえば、一方当事者が別の会社との契約関係で一定期間競業避止義務を負っている場合などは、当合弁契約を締結するべきではないでしょう)
・秘密保持義務(秘密情報の定義、秘密情報の取扱、秘密保持義務の例外、秘密保持義務の存続期間)
※秘密保持契約については合弁契約を締結する前の段階(合弁契約の協議に入る前の段階で作成することも検討すべきです)
・競業避止義務(ex 「合弁企業の株式を保持している期間及びその後1年間は、合弁会社の営業に直接的に競業するいかなる事業にも、直接的にも間接的にも、又は第三者の支援にも携わってはならない」など)
・公表のタイミング
どこまでを定款に盛り込むか
両者の協議により決定した事項について、どこまでを定款(Memorandum of Association、Articles of Association)に盛り込むかどうかについて話し合うことも重要です。
定款に盛り込むことで、合弁契約上の両者の権利や義務は法的に安定したものとなりますが、
他方で(1)第三者に公開される(マレーシアでは、第三者でも会社登録委員会において定款を閲覧することができます)、
(2)その変更には株主総会の決議が必要となる(将来的にも合弁契約当事者以外の株主が加わらない会社であればさほど問題にはならないと思いますが)等のデメリットもあります。
また、そもそも会社法や判例上認められない事項については、定款に盛り込むことは難しいでしょう。
可能であれば、合弁契約書締結時点で、合弁会社の定款内容についても合意しておくのがベターです。
覚書/予備的合意書(Memorandum of Understanding、letter of intend)の法的拘束力について
正式の合弁契約書を作成するまでの過程において、予備的合意書/覚書といった書面が作成されることがあります。
これらの書面は、協議の途中で、それまでに合意した事項などについて確認する趣旨のもとに作成されるものです。
書面のタイトルは、memorandumやmemorandum of understanding、はたまた書面形式のletter of intendなど様々です。
この書面について、「あくまでも覚書であって正式の契約書ではないのだから、法的拘束力はない」と決めつけてらっしゃる方もいらっしゃいますが、
必ずしもそうとうは限りませんので注意が必要です。
たとえタイトルが覚書であったとしても、その書面の内容が各当事者に法的拘束力を持たせる合意があったと認定されるような内容であれば、
その書面は法律上契約書として扱われることもあるのです。
どのような場合に、このことが問題になるかと言いますと、覚書を作成したものの、結局何らかの理由により最終的な契約の締結には至らなかった場合です。
例えば、合弁による進出の方向で話しを進めていたものの、より良い合弁相手方がみつかったとか独資での進出がベターだと判断した等の理由により、当相手方との話し合いを白紙にしたい場合などです。
このような場合に、たとえ正式に合弁契約書の締結に至っていなかったとしても、
それまでに作成した覚書の内容次第では、法的拘束力が認められ、契約に違反による損害賠償請求などをされる可能性があるということです。
覚書の法的拘束力を排除したい場合には、その旨の文言(No Legal Effet条項)を覚書内に明記しておくべきです。
合弁契約書等の作成サポート
弊社では、マレーシアの提携先法律事務所との恊働により、上記合弁契約書/株主間契約書/覚書の作成をサポートさせていただいております。
これらの書面は、マレーシア事業の命運を左右するほどの重要書面といっても過言ではありません。ぜひ専門家にご相談ください。