マレーシアでの起業と就労ビザについて。


  • マレーシアのビザ制度はとても複雑で、年々変化しています。

マレーシアで事業を開始し、自らマレーシア国内に滞在し、取締役/従業員として積極的に事業運営に携わる外国人は、イミグレーションから就労ビザ(employment pass)を取得する必要があります。

 

 

個人事業での就労ビザ申請は不可。

 

まず、大前提のお話しとしまして、個人事業では就労ビザを取得することはできません。
就労ビザを取得したい個人や企業は、現地法人を設立、またはマレーシア国外に法人をお持ちの方の場合は駐在員事務所/支店を開設する等の方法をとることになります。

日本で起業する場合、まずは個人事業から小さくスタートをして、ある程度見通しがついた段階で法人成りという方法をとることができますが、上記の理由により、マレーシアではこの方法はとれません。

 

就労ビザ申請の流れ(マレーシア法人の場合)

以下、マレーシア法人(SDN. BHD.)を設立し、就労ビザを取得する流れについて解説致します。なお、マレーシアにはもうひとつの法人制度、「ラブアン法人」(マレーシア国外を対象としたビジネスを行なうための法人制度。)というものがございまして、そちらを利用して就労ビザを取得する手続きはまた別の流れとなります(弊社はラブアン法人の設立、就労ビザ取得サポートも行なっております)。

就労ビザの申請は、就労ビザを発給を求める個人から行うのではなく、法人から申請を行います。

(1)会社を設立/駐在員事務所/支店を設置

(2)当該事業に必要なライセンス/許認可/承認を取得(事業所ライセンスやWRT Approvalなど)

(3)当該事業を管轄する省庁へ外国人就労ポストの申請を行い、ポストを与えてもらいう。

(4)与えられたポストに対して当事者個人の審査を申請し、許可を得る。

(5)許可書を駐日マレーシア大使館等へ提出し、就労ビザを発給してもらう(現在マレーシア国内で働いている等の事情により既にマレーシア国内にいる場合は、わざわざ日本に帰らなくてもマレーシア国内でこの手続きをすることが可能です)

上記(1)から(5)までの期間は、事案により様々(ライセンス取得が必要かどうか等)ですが、会社設立には打ち合わせから含めると数週間、その後就労ビザを取得できるまでに少なくとも数ヶ月〜半年程度かかることが一般的です。

また、役所側の事情により、手続きが予想外にずれこむこともありますので、マレーシアでの事業開始予定日が決まってらっしゃる場合はなるべく早めに着手されることをお勧め致します。

なお、就労ビザが発給されるまでの間でも、マレーシア国内において駐在員のコンドミニアムを借りることは可能です。

また、マレーシアにおいては、マレーシア法人設立時の取締役に関して就労ビザは必要ありませんので、事前にマレーシア入りした駐在員が現地にて会社設立準備を進め、かつ、会社設立時の取締役に就任することが可能です(マレーシア法人設立に際しては、マレーシア在住の取締役が2名必要となります)。

就労ビザの審査で考慮される項目

・会社の資本金と株主構成(外資100%なのか、それともマレーシア資本が含まれているか)
・当該事業を管轄する省庁の許認可/承認を得ているかどうか
・当該申請外国人が就任するポストの重要性(そのポストが必要かどうか。マレーシア人で代替できないかどうか)
・当該申請外国人の給与(5,000リンギット以上かどうか)、雇用契約期間(2年以上かどうか)、学歴(大卒以上が望ましい)、経験

就労ビザの審査にあたっては上記のような項目が考慮されます。
扶養家族について

就労ビザを取得した人の扶養家族は、Dependant Passの発給を受けることができます。
このビザを取得することで、就労ビザを取得した者が許可された滞在期間と同期間のマレーシア滞在が認められるほか、別途就学許可(Study Approval)をとることで学校に通えたり、就労許可(Work Permissoion)をとることで就労することができるようになります。

 

ケース別の注意点など

1.自らの100%出資でマレーシア法人を設立し、当会社で就労ビザを申請する場合。

100%出資の場合、就労ビザを取得するための要件として、最低50万リンギットの資本金がイミグレーションから求められます。ここでいう「資本金」は「授権資本金(authorized capital」ではなく、実際に払い込まれた「払込資本金(paid-up capital)」のことをいいます。

あくまでも「資本金」ですので、会社口座への払込み後、会社は自由に事業資金として使うことができます。国外へ投資することなども可能です。

なお、小売業、卸売業、飲食業などの業種に関しては、就労ビザの申請に先立ち、国内取引・協同組合・消費者省(MDTCC)からWRT Approvalを取得せねばならず、そのWRT Approval取得のためには100万リンギットの資本金が求められることとなっております。また、WRT Approvalは、マレーシア経済にとって有益(benefiting to Malaysia’s economy)で、かつ、独特(unique)のビジネスに対して付与されるものとなっていることにもご留意ください。

上記のとおり、就労ビザを申請するためには、ビザの申請のまえに会社を設立し、当該事業に必要な許認可を取得しておく必要がありますが、万が一許認可や就労ビザの取得が認められなかった場合でも会社設立や許認可取得費用は戻ってきません。ですので、会社を設立する前に、許認可や雇用パスの要件を入念にチェックすることが必要なのですが、許認可や就労パスについては申請してみないことには分からない部分も多いというのが現状ですので、非常に難しいところです(日本国外でビジネスをする場合には、これらのリスクについても覚悟が必要になるということです)。

一定の業種については、そもそも外国人には開放されていなかったり、外国人の出資割合が一定割合までにおさえられていたり、ブミプトラ(マレー系マレーシア人)による一定割合の出資が条件となっていたりすることもあります。また、外国人によるライセンス取得が可能であったとしても、政策的な問題で、その発行が一時的に凍結されていることもよくありますので、その点もご注意ください。

 

2.マレーシア資本との合弁でマレーシア法人を設立し、当会社で就労ビザを申請する場合

マレーシア資本(マレーシア企業やマレーシア人)と出資金を出し合い、合弁会社を設立し、当会社から就労ビザを申請する場合、イミグレーションが求める最低資本金は35万リンギットとなります(外資100%の場合よりも求められる資本金は少なくなります)。

また、資本金のうち一定割合以上をマレーシア資本に所有させることで、上記の業種に関しても、上記WRT Approvalの取得が免除されますので、100万リンギットの資本金を用意する必要がなくなります(つまり、上記業種に関しても、35万リンギットの資本金で就労ビザの申請ができるようになる)。

なお、混同されている方がいらっしゃいますので、念のため補足しますと、「株主」と「取締役」はまったく別のものですので、マレーシア資本(マレーシア企業やマレーシア人)を株主として参加させるからといって、必ずそのマレーシア人を「取締役」にする必要はありません。

 

3.マレーシア資本100%の会社に取締役/従業員として参加し、就労ビザを申請する場合

マレーシア資本(マレーシアの企業や個人)による100%会社の場合、外国人の就労ビザ申請のために求められる最低資本金要件は25万リンギットになります(合弁形態の場合よりも更に低くなります)。

この場合、上記WRT Approvalを取得する必要はありません。

 

4.日本法人(やその他外国法人)の駐在員事務所や支店を設立し、就労ビザを申請する場合

もしマレーシア国外(日本やその他の外国)に法人を所有しているなら、その法人の「駐在員事務所」や「支店」(但し、支店形態は許認可やライセンスがおりにくい等の理由により一般的ではありません)をマレーシア国内に設立し、その駐在員事務所等から就労ビザのポストを申請することができます。

ただし、「駐在員事務所」は、将来のマレーシア進出にむけて情報収集等をするための事務所として位置づけられており、マレーシア国内における商業活動は認められておりません。

支店形態の場合は商業活動が可能ですが、上記の通り、あまり許認可がおりない業種が多いため(ex. 上記WRT Approvalは支店形態には与えられません)、一般的な選択肢ではありません。

 

国外を対象にビジネスや投資をする方にはラブアン法人という選択肢も!

上記のとおり、マレーシア法人を設立して就労ビザを取得することはなかなか大変です。多額の資本金(50万リンギットや100万リンギット)が必要ですし、事務所を借りることも要件とされています。「マレーシア法人で就労ビザをとって、まずは自宅でローコストでスタート」ということは認められないわけです。さらには、最近では、就労ビザ申請時にマレーシア人の雇用が求められる傾向にあります。

この点、マレーシア国外に対してビジネスや投資をすることを考えている方には、もう一つ、そしてマレーシア法人に比べて比較的簡単な選択肢があります。

それは「ラブアン法人を設立し、就労ビザを取得する」という方法です。

ラブアン法人とは、マレーシア国内の金融特区ラブアン島に設立する法人で、通常のマレーシア法人(SDN. BHD.)とは異なるものです。マレーシア法人というのは Companies Act 1965 という法律に基づいて設立されるものですが、ラブアン法人とは Labuan Companies Act 1990 という全く別の法律に基づいて設立されるものです。

このラブアン法人をつかった就労ビザ取得という選択肢の何がよいかと言いますと、マレーシア法人で就労ビザを取得する場合と違い、「最低資本金の制限がなく」、「事務所をもつ必要がなく」、そして「銀行業等の金融関係の業種を除き、ほとんどの業種でライセンスを取得する必要がない」という点です。

なぜこのようなことが認められているかと言いますと、ラブアン法人は、基本的には、マレーシア居住者に対するビジネス活動が認められておらず、また、マレーシアリンギットでの請求も認められていませんので(主にドル決済で運営している企業が多いです)、マレーシア法人のように国内の仕事を奪う等の影響を与える可能性がないからです。

就労ビザ取得までの期間も、マレーシア法人に比べるとスピーディーです(といっても、マレーシアの役所が絡むことですので、スムーズに行かないことはマレーシア法人の場合と同じですが、、、)。

マレーシア国外を対象としたインターネットビジネスやコンサルティングビジネス、投資活動を予定されている方はぜひ一度検討されてはいかがでしょうか? 弊社でもサポートを行なっております。

将来的に、マレーシア国内に対してもビジネスを行ないたいとお考えになった場合には、マレーシア法人を設立し、ビジネスを展開することも可能です。

なお、ラブアン法人の設立要件や就労ビザ取得要件につきましては、過去、一時的に厳しくなったこともあります。その後、緩和政策がとられ、今(2014年)は比較的どちらも認められやすい状況となっていますが、再度厳しくなる可能性もございます(実際、当局が見直し作業に入っているという情報も入ってきております)。 ラブアン法人に限らず、海外での法人設立やビザに関しては、取得できるうちに取得しておくということもひとつの考え方かと思います。

ラブアン法人設立に関しては、下記ページをご覧下さい。また、弊社コンサルタント熊木のブログでもラブアン法人の情報を発信しておりますので、ぜひご覧下さい。

ラブアン法人設立サポート

熊木のブログ

 

レジデンスパスについて

2011年にできた新しい制度です。

以下の条件に該当する個人は、レジデンスパス(Residence Pass)を申請をすることができます。

マレーシアにて3年以上働いた経験があること。
申請時点で有効な就労ビザ(Employment Pass)を保有していること。
・規定以上の学歴の証明、または専門性の証明ができること。
・5年以上の職業経験
・年間144,000リンギット以上の収入があること。
・所得税番号をもっており、最低2年間は所得税を納税していること。

レジデンスパスを取得することができれば、以下のメリットを享受できます。

勤務先を変更するたびにビザを変更する必要がありません。
・最長10年の就労・滞在が可能となります。
・配偶者と18歳未満の扶養家族も当該レジデンスパスの取得が可能です。
・レジデンスパスを取得した配偶者は就労ビザをとることなく、収録が可能です。

レジデンスパスを取得できそうな方は、現在の会社にお勤めの間にレジデンスパスを取得し、その後、自分の会社を設立するということも考えられます。